音楽そのものが持つ力以外に、LOVE PSYCHEDELICOが驚異的なヒットを遂げた理由を僕は上手く説明できない。
正直言って、外見的には地味で大衆受けするようには思えないし、マスメディアにもあまり顔を出さない。別に喋りが楽しいわけでもない。何処かしこでもその姿を目にするようなプロモーションも勿論しない。強いていえば、印象的でクールなジャケットワークで若い人を惹きつけたのはウマイな、と思ったけど、まぁ中途半端に洒落てはいるけれど結局何を表現したいのかよく分からない昨今のデザイナーズCDジャケットよりは、よっぽどいいと思う。
僕がラヴ・サイケデリコを知ったのは、ある深夜に相棒ボローラと共に夜道を走りながら聴くともなく聴いていたFMラジオがキッカケだった。どんな人が歌っているのかは勿論の事、どれだけ売れているのか?TVにはよく出るのか?発言は?ファッションは?などといった事は全く知らなかった。前情報なんて殆どなかった。
でもそんな事はどうだってよかった。So What??
オンボロ車のスピーカーから「LADY MADONNA」がクールに放たれただけで、「LAST SMILE」が切なく響いただけで、その懐かしい音に僕は打たれた。
デリコの音楽は、勿論新しい。懐かしい匂いがするけれど、とびっきり新しくて、21世紀的でクールなサウンドだ。でも、やっぱり何処か懐かしい。
いや、懐かしいというよりも、今も昔も変らないものを、デリコの音はそっと大事に抱えているような気がする。
あるいは、人はそれを普遍性と呼ぶのかもしれないけど、そんな小難しい言葉は必要ないと思う。音楽によって僕達が「昔」に置き忘れてしまった何かを取り戻せるならば。
「THESE DAYS」を聴くと、風が静かに草原を揺らし始める風景を、僕はいつもイメージする。開放的だけど、何処か切ない景色だ。そして僕はその真ん中に立っている。
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