北海道一周の一人旅 :帯広 釧路

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北海道一周の一人旅 (2000年9月17日〜23日)

<9月18日>
帯広→釧路

 起きてまず脳裏に浮かんだのが、「豚丼!そしていざ釧路へ!」。そんなわけで、どの観光本にも載っている「ぱんちょう」という豚丼屋さんへ行くことにした。

 本によれば11時開店とのこと。今回の旅の行程のすさまじさを考えれば、可能な限りの時間を移動に費やしたいところなのだけど、まあ、旅は焦らず恋は焦らず。2時間ほど帯広の街を散策することにした。

 11時をちょっと過ぎたところで、目的の店へとカローラを走らせる。・・・閉店。無念。平日フラフラ流離っている暇な旅人のためにも、観光本には「月曜日は定休日」って書いておいてほしいよ。

 ところで、コンタクトの調子がどうも悪い。保存液を忘れてしまったもので、昨夜は真水に浸しておいた。それが悪かったのだろうか?
 「くすりのツルハ」(北海道なら何処でも見かける薬のスーパー)で、洗浄液、保存液、缶コーヒーを買う。やれやれ、はるばる帯広まで来て「くすりのツルハ」かよ。

 豚丼は、土日を使った日帰りの旅で再訪した時に食べよう。第2希望、「パスタ」というパスタ屋さんへ。・・・閉店。無念。

 ことごとく月曜日休みだ。散髪屋さんのようだ。

 仕方がないので、釧路へ向かう事にする。なんといっても今回は気の遠くなるような旅路だなのだ。稼げるうちに、距離を稼いでおかないと。

 移動中は、相変わらず、大きな音量で好きな音楽をかけながら、ゆっくりと、時に少しだけ速くボローラを走らせているだけだ。
 途中、会社から電話が来て、何々を教えてほしいだの、僕が作っていた書類はどこにあるのかだのと訊かれた。ゆったりとしたときの中に埋もれかけていた僕は、それで再び現実に引き戻された。やれやれ。

 帯広でもそうしたように、釧路の街に着くなり、まずは宿探しを兼ねて、フラフラと街を彷徨った。

 * * *

 ある海岸へ辿り着いた。

 素敵・・というよりはどこか物悲しい風景だったけど、不思議となんとなく心惹かれた。圧倒的な力や運命的な引力ではない。だけど、その風景は、穏やかに僕を掴んで離さなかった。

 ドアロックはしたものの、車の窓を半分程開けておいて、僕はデジタルカメラを片手に近場をフラフラと彷徨っていた。でも、もう少しだけ今いる場所よりも遠くへ行きたかった。

 防犯の為に、一応窓を閉めておこうと思って取った行動なのだが、車の外から開いている窓越しにパワーウインドウを閉じるスイッチを押してしまった。当然、ウインドウはゆっくりと上昇してくる。僕は慌てて、腕を車外へ出す。窓は閉まり、全てのドアにはロックがかかっている。・・やっちまった・・。

 辺りの人に助けを求め、恥も外聞もなく訊きまくった。タクシーの運転手さんが「ほしたら、ガソリンスタンドに行ったらいいんでない?」と僕に教えてくれ、僕を近くのガソリンスタンドへ連れて行ってくれた。

 ガソリンスタンドの若い従業員さんと、スタンドのワゴンで再び海岸へ向かった。専用のロック外しを使って、ドアを無理やりこじ開けてもらうのだ。
集中ロック式だったので、本当に全然外れなかった。2時間くらい経過したような錯覚に陥った。

 やがてドアは開いた。でも、今度は鍵がかからなくなってしまった。

 スタンドで直してもらう事にし、スタンドへ向かうワゴンをボローラで追走する。
運転席のドアを全て解体し、思い作業の末、無事直してもらった。


 淡々と書いているけど、その時僕は本当に滅茶苦茶感謝していた。心の底から、といえると思う。このぶっきらぼうな僕に出来る最大限の言葉と表情で感謝の気持ちを伝えた。

 釧路という街で、知らない土地で、挙句まだまだこの先果てしない旅路が続くというのに、俺は一体どうなってしまうんだろう?と、真剣に困っていた。途方にくれていた。

若い店員さんにはあまりに申し訳なかったので、せめてもの気持ちということで、満タン給油をした。


日もとっぷりと暮れ、僕はぐったり疲れてしまっていた。当然、宿も全然見つからず、安くはなさそうな少し洒落たホテルにチェックインし、風呂に入った。

ノートパソコンを開き、釧路出身の友達にメールを書いて送信した後、僕は街に繰り出した。