'99年1月6日:天文台のある丘

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 旭川に帰る度に必ず喫茶店「ルル」を訪れる。この店は吹奏楽局員行きつけの店で、僕のようにとっくの昔に高校を卒業したOB・OG達も帰省の度にママを慕ってここに駆けつける。

 店に行く前に、せっかくだから常磐公園を散歩することにした。
 常磐公園とは、旭川市民の憩いの場的な存在のとても大きな公園だ。緑が多く、公園中央には千鳥が池という池がある。公園内には市立美術館、公園の端には中央図書館や公会堂がある。一応、常磐公園近辺は文化的スポットということになる。
 中央図書館は昔のボロボロな外観だった頃から好きだ。でも、とてもきれいな作りの新・中央図書館になってからというもの、放課後くらいの時間になると、きまって高校生が大挙して押し寄せてくる。別に騒がしくはないのだけど、何となく賑やかな若さ溢れる場所となってしまったので、新しくなってからはあまり行っていない。
 公会堂はご存じの通り、音楽をはじめ、いろんな文化行事が行われる場所だ。実は僕は見る方としてよりも演奏サイドとして公会堂にはお世話になっている。初めて公会堂のステージに立ったのが、たしか中学一年の吹奏楽祭だった。その時以来、高校卒業までの実に6年もの間、年に数回は公会堂で演奏をしたことになる。

 常磐公園には小さな天文台がある。その小高い丘からは、千鳥ヶ池とその上に広がる空を一望することが出来る。浪人時代、勉強が手に着かなくなったときなどは、よく自転車をひとっ走りさせて常磐公園へやって来た。そして売店で缶コーヒーを買い、天文台のある小さな丘を登った。てっぺんに着くと適当な岩を椅子代わりにして腰を下ろし、缶コーヒーを啜り、千鳥ヶ池をぼんやり眺めながら気の済むまでそこで風を受けていた。
 そこから眺める風景は平和で安らかな世界そのものだった。小さな子供を連れた夫婦が鯉や鳥に餌をあげていた。池の方へ目を向けると、恋人達を載せたボートがゆっくりと移動していた。水鳥とその雛達もきれいに列をなして池の上を泳いでいた。
 僕は、そんな様子をひたすらぼんやり眺めているだけだ。でも、何故だか家の中に閉じこもっているよりはずっと心が落ち着いた。たぶん、風に吹かれて馬鹿な頭を冷やしたからだろう。 

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冬の天文台から眺めた千鳥ヶ池。手前の真っ白い部分は全部池です。

今は氷と雪に閉ざされている池。
でも、また春が来たら、ボートに乗った家族連れやカップルで賑わいます。

  歩いているうちにさすがに寒くなってきたので、そろそろルルに行くことにする。