高倉健さんの訃報、そして夕張へ

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昨年晩夏の話ですが、高倉健さんの訃報を聞いていてもたってもいられなくなり、その週末には北海道の夕張市に弾丸旅行に出かけていました。

鹿ノ谷駅、ホーム

鹿ノ谷駅、構内
写真は鹿ノ谷駅。終点・夕張駅のひとつ前にある小さな無人駅です。ここから映画「幸福の黄色いハンカチ」ロケ地跡まで黙々と歩きました。

夕張は日本で唯一の財政破綻都市。道中、人影はほとんどなく、朽ち果てた建物や錆び付いた看板、雑草が伸び放題のグラウンドが時折視界に入ってくるだけの無音の風景でした。

でも、季節の飾り物がさりげなく置かれているということは、誰かが今も大切にこの駅を守り続けているということ。率直に言えば、夕張の街は寂しさを通り越して厳しさすら漂う光景だったけど、この駅構内の飾り物に微かな希望を感じました

幸福の黄色いハンカチ
夕張の「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」。かつての映画の舞台です。

冬季閉館中でしたが、高倉健さんの訃報を受けて11月末まで臨時開館となっていました。この日曜も沢山の人が訪れていました。昔の作品ですが、良い物語ですので、ご興味のある方はぜひ観てみて下さい。

思い立ったが吉日で決めた旅だったけど、来て良かったな。一人旅は寂しいけど、ジワジワと沁みるような感覚があります。

公衆電話ボックス

鉄道橋
もう一つの希望は、志ある若き市長の存在です。

かいつまんで言うと、東京都職員の鈴木さんは財政破綻した夕張市に1年間の期限付きで派遣され、後に自らの意思で1年の延長を志願。計2年の派遣期間満了時には多くの市民が市役所に集まり「黄色いハンカチを振って」鈴木さんを見送った(ジーンとくる話だ)。その後、市民の熱い要請を受け、都職員を辞して市長選に立候補し、全国最年少の30歳1ヶ月で当選、という人です。それ以降の活躍はニュースで周知の通りですね。現在(2014年11月時点)は33歳です。

若くて志のある市長は今や全国に沢山いますが、東京での豊かで安定した生活を捨て去って、さびれゆく街に心血を注ぐ姿に心打たれました。若い人に街の未来を託したいという市民の希望もあったのでしょう。

ただ、道道(県道の北海道版)を4時間ほど練り歩いていて(猛烈に疲れたー)、時々お店らしき建物こそ見かけるものの、人の気配が感じられなかったのも事実。あまりこの言葉は使いたくないけど「廃墟」という言葉が頭をよぎりました。人が市外へ流れ、地元の商売が廃れ、雇用が減少し、また人が外に流れる、という悪循環が生まれているのかな。人口はついに一万人を割ってしまいました。

かつて炭鉱で栄えた町、夕張。十数年前に札幌に住んでいた頃、ほぼペーパードライバーだった僕が運転の練習のためによく訪れ、ドライブ好きに変身させてくれた街でもあります。財政破綻して以来、いつか訪れたいと思っていたのですが、高倉健さんが背中を押してくれました。まぁ、毎度ながら行き当たりばったりな旅をしていますが、これも僕ってことで...。

夕張駅、ホーム
夕張駅ホームからの風景。鉄ではないっす。

高倉健さんを巡る旅でしたが、同時に夕張の今も肌身で感じ、ちょっと複雑な思いでした。でも来て良かった。頑張れ、バリバリ夕張(北海道の人にしか通じないか)。また行きます。仕事の関係で今回は週末弾丸旅だったけど、今度は休暇をとって長めに滞在したいと思います。

Camera:
Canon EOS 5D Mark II, Sony DSC-RX1R
Lens:
Canon EF17-40mm F4L USM