寂しいのでR.

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 今は8月8日。会社の中央研修センターに、僕はいる。

 東京の都心はおろか、地元の商店街からもここは遠く離れている。木々に覆われたセンターの敷地内はひどく静かで、少し現実離れしているくらいだ。無数のセミの鳴き声だけがひどく無機質に鳴り渡っている。

 コンピュータウイルスが流行っているらしく、会社のサーバーは一様に死んでいて、インターネットをさすらうことが出来ない。外の、向こう側の世界と切り離されてしまったみたいだ。

 新しい相棒パソコンを連れて来たけれど、いまいち何かを作ろうという気が起こらない。いや、創作意欲どころか、何かをしようという気にすらなれない。ハードディスクに落とし込んだラブサイケデリコを鳴らしっぱなしにしながら、ひたすら雑誌を貪り読んでいるだけだ。


 僕は今、寂しさにどっぷり浸かってしまっている。大好きな主人に捨てられた子犬のように。


 「独りでいる時間が必要だ」と言い、実際、今まで恐ろしいくらいの時間を独りで過ごしてきた。


 「おまえは・・・おまえが思っているほど強い人間ではないんだ」と、闇の向こうから誰かが呟いている。